日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル

日本模型 1/20 富士FA-200 エアロスバル
日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル

「ミニチュアカー」と銘打っておきながら、2回目で脱線することをお許し頂きたい。しかしどうしてもこのモデルについてはスバリストとして触れておかなければいけないと思う。

富士FA-200エアロスバルといえば、コアなスバリストの間では、もはや「定番」ともいえる、この「飛行機野郎の追憶」。

 1975年、富士重工業が「レオーネSEEC-T」シリーズの発売に際して製作した全編で20分ほどのデモテープで、あの「刑事コロンボ」の吹き替えで有名な俳優、小池朝雄氏が主演。

1975年 富士重工業販促用デモテープ「飛行機野郎の追憶」

エアロスバルの排気音はもちろんだが、陸軍一式戦闘機「隼」、二式戦闘機「鍾馗」、四式戦闘機「疾風」、そして「零式艦上戦闘機」=「ゼロ戦」のエンジン音まで聞けるというのだから、これだけでも古くからのスバリストにはたまらない。

 また、冒頭と末尾に、当時、日本中の話題をさらった「怪人二十面相」のCMがきちんと挿入されているのも秀逸。「SEEC-Tのテーマ」とともにお楽しみ頂きたい。(音質劣化と回線速度によっては再生まで時間がかかる場合があるので、予めご承知置きを。)

アクアシステムズ「エアロスバルLE」

また、「アクアシステムズ」というPCソフト会社から、MSのフライングシミュレータを利用した「エアロスバルLE」というフライトシミュレーションが発売されていた。

 「飛行機を操縦する」という行為は、一般人にはなかなかなじみのないもので、たとえば上昇、下降というのはクルマのドライビングにはない要素だし、旋回も外側に車体がロールしながら回っていくクルマと違って、内側に機体を傾けて回っていく感覚も、ちょっとした非日常的体験(笑)。自由自在に空を駆け回る感覚も楽しいものだ。

 製造中止から30年経過してもなおこうした商品が発売されるというのだから、その存在はやはり多くの人々の記憶の中に深く刻み込まれているということなのだろう。

 スバリストにとっては心強く、そしてありがたい「事実」である。

「富士重工業」の前身が、戦前・戦中を通じて、陸軍九十七式戦闘機、陸軍一式戦闘機「隼」、陸軍二式戦闘機「鍾馗」、陸軍四式戦闘機「疾風」など数々の傑作機を生み出した「中島飛行機」であることはスバリストでなくともよく知られている。

 しかし終戦を迎え、中島飛行機は航空機に関する一切の研究・開発・製造を禁止を余儀なくされ、やがて1950年8月、「財閥解体」により消滅。その「財閥解体」で分割されたうちの5社が再合同して1955年4月に発足したのが「富士重工業株式会社」で、当初はなんと航空機の再生産を目的にしていたということはあまり知られていない。

  そんな訳で、自動車産業に転身しても空への夢を断ち切れなかった富士重工業が1965年に初飛行、1966年から販売を始め、1977年までに298機生産した日本初の軽飛行機がこの「富士 FA-200 エアロスバル」だ。

 スバリストにとっては、1965年の初飛行成功以来、スバルのクルマの販促にも度々「駆りだされて」(?)スバル1000ff-1レオーネなどと一緒に撮られたカットでとても馴染みが深い飛行機である。

1975年2月発行 「Spilit of SUBARU」より
昭和46年4月発行 スバル1300G カタログ

その富士 FA-200 エアロスバルのミニチュアの決定版といえば、今回取り上げる日本模型 1/20というビッグスケールの「富士 FA-200エアロスバル」。 もちろん国産唯一の軽飛行機として、1/48、1/72といった手頃なサイズでも同じく日本模型とアリイからも発売されているので、今ならまだYahoo!オークションなどでもまだまだ比較的リーズナブルな価格で手に入る。

日本模型 1/20 FA-200 エアロスバル

まず圧巻なのは、パッケージのカッコよさ!

 夜間フライトに向けて準備に勤しむ日本航空の旅客機(ボーイング707か?)をバックに、真上からのスポットライトを浴びて輝くFA-200という、1960年代から1970年代までの少年向け書籍でよく見られるパターンなのだが、これが実にカッコよくて取り出して見る度にドキドキするのだ。

 この白地に赤の塗り分けの認識番号「JA3528」のFA-200は、確か当時の富士重工業の所有で、初飛行に使われた機体だったと記憶しているのだが、この機体の写真も当時の飛行機図鑑などに富士重工業が提供してよく見られたもの。「エアロスバルのカラーはやっぱりコレじゃなきゃ!」というスバリストも多いことだろう。いわゆる「マルフ」のマークもスバリストにとってはたまらないポイントだ。

 前脚と主脚に付いたスパッツを取り付けた実機のカットは見たことがないので、実際にオプションとして設定されていたのかは不明なのだが、零戦など主に太平洋戦争中の海軍の機体でよく見られる予備の燃料タンク「落下槽」をイメージさせるカッコよさにもシビれた。

日本模型 1/20 FA-200 エアロスバル

1/20のビッグスケールだけに、フラップ、方向舵などの可動部分はスプリング内臓ですべて可動。主脚・前脚サスペンション、徹底的にディティールまで再現された計器盤と室内、そしてとどめは空冷水平対向4気筒OHV ライカミングエンジン!

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日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル
日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル

OHVのバルブを動作させるためのプッシュロッド・チューブ、シリンダヘッド、エキゾーストパイプ、そして美しく並んだセパレート型のシリンダーに刻まれた冷却フィンは、なんとエッチングプレートを1枚1枚重ね合わせて再現するのだ!

日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル

こうした工程がいたるところに散りばめられていて、しかも部品の「合い」自体もあまり良くないために、それなりに見れるように組み上げるには相当の根気と執念、それに多少の飛行機についての知識や関連資料が必要だと思われる。

 しかしそれだけに、完成すると、まるでFA-200の実機を組み立て終わったような不思議な満足感が得られる一品だ。

 その作業は、たとえば長年不動だったクルマを引っ張ってきて、エンジンをバラしながら各部品の磨耗やクリアランスなどをチェックしながら組み上げ、再始動に成功したときの喜びととてもよく似ている。

 クルマにしろ飛行機にしろ、機械は目的を果たすための機能を複合的に組み合わせて成り立っている。そのひとつひとつの機能が果たす役割や採用した目的が分かれば、作り手の考え方や機械にこめた思いをより深く理解できる。

 ちなみに付属の説明書も総ページ数23ページにもわたる立派なもので、中島飛行機と数々の傑作機についてや、FA-200についてのテクニカルノート、可能な曲芸飛行など、作り手の情熱とFA-200への愛情がひしひしと伝わるすばらしいものである。

日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル
日本模型 1/20 富士 FA-200 エアロスバル

うわさによれば、このニチモの1/20エアロスバルも長年の度重なる再生産で、金型の痛みが進んだため、今後、再生産する予定はないのだという。非常に残念だが仕方がない。このモデルを送り出してくれたニチモに深く感謝しながら、現在市場に残っているものを大切に慈しむしかないだろう。

 しかし、これもこの間インターネット・オークションでお小遣いをはたいて、またひとつゲッチュしちゃったもんね(笑)。押入れの奥に仕舞いこんで「いつか」組み立てることにしよう。


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